被災者自身が復興に貢献する役割を積極的に果たしていくというキャッシュフォーワーク手法は、巨大災害と運命を共にせざるを得ない日本において、今後も有効なアプローチの一つであると考えられている。ただし、コロナ禍でキャッシュフォーワーク手法を実践するには、多くの課題が浮上した。コロナ禍におけるキャッシュフォーワーク手法は誰に活躍する機会を提供でき、その結果、地域をどう変えたのだろうか。
発行日:2022/09
編集責任:一般財団法人リープ共創基金
CC BY-SA 4.0
本レポートは、2020年度に休眠預金を活用して行われたコロナ禍でのキャッシュフォーワーク手法(以下、キャッシュフォーワーク。2020年度事業を指すものはCashForWork2020と統一した)の実践の結果を報告するものである。
コロナ禍では、約50万人の完全失業者と約600万人の休業者が生まれたが(ピーク時、総務省統計局労働力調査による)、キャッシュフォーワークはこのような職を失った方々自身の新たな可能性や役割の獲得に光をあてようとするアプローチであった。
キャッシュフォーワークは国際的に定評のある雇用創出の手法の一つであり、災害からの復旧や復興に関する事業に被災者自身を雇用し、賃金を支払うことによって、被災者の生活基盤の回復と地域の自律的な復興の促進を両立させる。
本レポートはコロナ禍のキャッシュフォーワークの実践を通じて、政策決定者や資金提供者に巨大災害下において有効な復興政策のヒントを提供し、また、将来のキャッシュフォーワークの担い手となるNPO団体の方々の実践の経験値を引き継ぐことを目的としている。
つなぎ雇用の対象となった若者の数
地域課題解決のために実施されたプログラムの数
雇用対象者の中でコロナ禍で直接的な減収やシフト減を経験した者の割合
雇用対象者のうち、仕事があることで将来への希望が持てた者の割合
雇用プログラムの実施対象となったNPOやソーシャルビジネスの主体(NPO法人12、株式会社1)
CashForWork2020実施のために使われた資金の総額
事業終了時点で就労決定した者の割合 (学業を優先するものを除く)
地域との関わりの強かった雇用対象者とそうでなかった雇用対象者の就労決定率の比率
キャッシュフォーワーク手法は災害の被災者の中で、困難を抱えながらも最低限の働く能力を有する方々も活躍せねばならないという苦難の中で発達した。
この手法は上手く運用されれば、被災者の生活の再建と地域の自律的な復興を両立することができる。ただし、運用に課題があれば、被災者を更に苦しめる危険性や地域の復興を阻害することすらあるのだ。